個人事業主が株式会社や合同会社に法人成りして成功する【メリット・デメリットと手順】

個人事業主として活動している方の中には、事業の規模や内容に応じて、法人成りを検討される方も多いと思います。法人成りには、税務や責任の面でメリットがありますが、同時に手続きや費用の面でデメリットもあります。また、法人成りをするにあたっては、どのような法人の形態を選ぶかも重要なポイントです。法人の形態には、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社などがあり、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあります。

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目次

個人事業主が「法人成り」して事業の成長と発展に導く

法人の種類と特徴

法人とは、法律上の主体として独立した存在となる組織のことです。法人には、公益法人や社団法人などの非営利法人と、株式会社や合同会社などの営利法人があります。営利法人の中でも、特に事業を行うために設立される法人を会社と呼びます。会社には、以下のような種類があります。今回は、特に個人事業主が業容拡大の為、法人成りを選択した時の形態である「会社」について、説明します。

  • 株式会社(株式会社):株主が出資した資本を株式として発行し、株主は株式の数に応じて権利と義務を有する会社です。株式会社は、最も一般的な法人形態で、株式を発行して資本を集めることができます。株主の責任は出資額に限定され、経営の分離が可能です。資本金に制限はなく、公開会社への移行も可能です。また、設立や運営に関する法律が整備されています。株式会社のメリットは、株式の譲渡が容易であることや、株主の責任が出資額に限定されることです。デメリットは、設立において許認可事業には、最低資本金の要件を満たさなくてはならないことや、会計や税務の面で厳しい規制があることです。また、間接有限責任を行う為、取引金融機関等からの信用獲得、初期費用や運転資金の必要額から、他の形態に比べ実質は高い資本金の設定が必要になります。
  • 合同会社(LLC):米国のLLCに相当する形態で、設立費用が低く、運営が柔軟です。社員全員が経営に参加でき、出資者は間接有限責任を負います。出資者が出資した資本を持分として表し、出資者は持分に応じて権利と義務を有する会社です。合同会社は、2006年に新設された法人の形態であり、株式会社に比べて設立や運営に関する法律が緩やかです。合同会社のメリットは、会計や税務の面で簡素な手続きで済むことです。デメリットは、持分の譲渡が容易ではなく、事前に他の出資者の同意が必要であることです。
  • 合資会社(LP):直接有限責任社員と直接無限責任社員の両方が存在する点が特徴です。小規模な家族経営に適しており、経営者間の信頼関係が重要となります。出資者が出資した資本を持分として表し、出資者は持分に応じて権利と義務を有する会社です。合資会社は、合同会社と同じく設立に必要な資本金がなく、また、合同会社と異なり出資者の責任は出資額に限定されません。出資者は、会社の債務に対して自己財産をもって責任を負うことになります。合資会社のメリットは、設立や運営に関する法律が緩やかであることです。デメリットは、出資者の責任が無限であることや、会社の経営に関して出資者全員の同意が必要であることです。
  • 合名会社(GP):全社員が直接無限責任を負い、古くからの家族企業などで見られる形態です。経営者が直接経営に関与し、個人の財産も企業の負債に充てられる可能性があります。出資者が出資した資本を持分として表し、出資者は持分に応じて権利と義務を有する会社です。合名会社は、合資会社と同じく設立に必要な資本金がなく、合資会社と異なり、出資者は全員が会社の経営に参加することになります。出資者は、会社の債務に対して自己財産をもって責任を負うことになります。合名会社のメリットは、設立や運営に関する法律が緩やかであることや、出資者の経営参加によって信用力が高まることです。デメリットは、出資者の責任が無限であることや、持分の譲渡が自由ではなく、他の出資者の同意が必要であることです。

      【設立や運営の容易さ評価】

法人成りの手順

株式会社

個人事業主が株式会社への法人成りをするには、以下のような手順を踏む必要があります。

  1. 設立準備:株式会社の設立に必要な事項を決めます。これには、会社の名称、目的、本店所在地、資本金、株式の種類と数、役員の選任などが含まれます。また、設立に必要な費用や期間、税務や会計の面での対応なども検討します。
  2. 定款作成:株式会社の基本的な規則を定めた文書を作成します。定款には、設立準備で決めた事項や、株主総会や取締役会の開催方法、株式の譲渡制限などが記載されます。定款は、公証人によって認証される必要があります。
  3. 資本金の払込:株式会社の設立に必要な資本金を払い込みます。資本金は、現金や有価証券、土地や建物などの財産で払い込むことができます。資本金の払込を証明する書類を作成します。
  4. 登記申請:株式会社の設立を法務局に登記します。登記には、定款認証証明書や資本金払込証明書などの書類が必要です。登記が完了すると、株式会社として法人格が認められます。
  5. その他の手続き:株式会社の設立に伴って、税務署や社会保険事務所などに届出を行います。また、印鑑や領収書などの必要なものを用意します。

他の形態

個人事業主が合同会社、合資会社、合名会社への法人成りをするには、株式会社への法人成と同様の手順を踏む必要がありますが、いくつかの点で異なります。以下に、それぞれの形態への法人成の手順と特徴を株式会社と比較してまとめます。

  • 合同会社への法人成り:合同会社への法人成りは、株式会社への法人成りとほぼ同じ手順ですが、定款の認証が必要ないという点が異なります。定款の認証が必要ないため、公証人の費用や手間が省けます。また、合同会社の設立に必要な資本金は、1円でも可能です。しかし、合同会社の持分の譲渡は、事前に他の出資者の同意が必要であるため、株式会社の株式の譲渡よりも柔軟性が低いです。
  • 合資会社への法人成り:合資会社への法人成は、株式会社への法人成とほぼ同じ手順ですが、定款の認証が必要ないという点が異なります。定款の認証が必要ないため、公証人の費用や手間が省けます。また、合資会社の設立に必要な資本金は、1円でも可能です。しかし、合資会社の出資者の責任は、株式会社の株主の責任に対して、無限であるため、会社の債務に対して自己財産をもって責任を負うことになります。また、合資会社の経営に関しては、出資者全員の同意が必要であるため、株式会社の経営よりも効率性が低いです。
  • 合名会社への法人成り:合名会社への法人成は、株式会社への法人成とほぼ同じ手順ですが、定款の認証が必要ないという点が異なります。定款の認証が必要ないため、公証人の費用や手間が省けます。また、合名会社の設立に必要な資本金は、1円でも可能です。しかし、合名会社の出資者の責任は、株式会社の株主の責任に対して、無限であるため、会社の債務に対して自己財産をもって責任を負うことになります。また、合名会社の出資者は全員が会社の経営に参加することになります。これは、信用力が高まるというメリットがありますが、同時に持分の譲渡が自由ではなく、他の出資者の同意が必要であるというデメリットがあります。

【手続面の注意点】

項目 内容
設立費用株式会社の設立には約25万円、合同会社の設立には約10万円の費用がかかります。これらの費用は資本金から捻出することが可能ですが、資本金は個人の資産ではなくなるため、私用では使えなくなります。
社会保険法人の場合、社会保険への加入が義務付けられており、個人負担と会社負担が折半になります。個人と会社をトータルで見た場合のキャッシュアウトを考慮する必要があります。
欠損金法人の場合は10年間赤字が繰り越せますが、個人の事業で出た赤字を法人の赤字として引き継ぐことはできません。
謄本に載る情報法人の謄本には会社の住所だけでなく代表者の氏名と住所も記載されます。プライバシーに関わる情報が公開されることになるため、注意が必要です。
廃業届と予定納税個人が廃業する際には、所得税の予定納税がある場合、その年の7月1日~15日に「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請」を出さないと、事業を廃止したにもかかわらず従前の予定納税額を支払うことになってしまいます。
休眠、解散、清算一度会社を設立すると、休眠する場合にも毎年申告が必要ですし、法人をたたむ際には解散と清算の2回の申告と公告が必要となり、費用と手間がかかります。
法人成り手続面の注意点

個人事業主が「法人成り」する理由は何か

税務面の違い

個人事業主の税金

個人事業主は、事業所得に対して所得税が課されます。所得税は累進課税であり、所得が増えるほど税率も上がっていきます。また、住民税や個人事業税も負担する必要があります。個人事業主の場合、事業所得がすべて課税対象となり、事業主本人への給与という概念はありません。

法人成り後の税金

法人成りをすると、法人の資産と個人の資産は別のものとして扱われ、経営者は役員報酬を受け取ることになります。法人は法人税が課され、これは法人所得に対する税金です。役員報酬には所得税が課されますが、法人税の税率は所得税の最高税率よりも一般的に低くなります。

税務面でのおすすめ

税務面でのおすすめは、個人事業主の年収や事業の規模、将来のビジネスプランによって異なります。利益が800万円を超える場合、法人税の税率が個人事業主の所得税率よりも低くなるため、法人成りが税金面で有利になる可能性があります。また、法人成りによる社会的信用度の向上や経費で計上できる項目の増加など、税金以外のメリットも考慮する必要があります。

【税務面での注意点】

            項目           説明
税率の変更法人成りによって適用される税率が変わり、個人事業主の場合は所得税が主な税金ですが、法人になると法人税が主な税金となります。利益が少ないうちは所得税の方が税率が低いことが多いため、利益の見込みに応じてタイミングを考える必要があります。
消費税法人成り後は、消費税の免税期間が設けられますが、インボイス制度の適用を受ける場合、免税事業者でいられない点に注意が必要です。
役員報酬法人成り後は、役員報酬の設定が重要です。適切に設定することで、法人税上の経費にもなり、個人の所得税上も給与所得控除を取ることができます。
法人成り税務面の注意点

法人成りのメリット・デメリット

法人成りは、税務面でのメリットや事業の信頼性向上など、多くの利点をもたらしますが、それには設立コストや運営の複雑さなどのデメリットも伴います。個人事業主が法人成りを検討する際には、これらのメリットとデメリットを総合的に考慮し、自身の事業規模や将来計画に合わせた最適な選択をすることが重要です。また、専門家のアドバイスを求めることも、適切な判断を下すために有効な手段となります。個人事業主の皆様が、より良い事業展開を実現できるよう、法人成りの道を慎重に選択してください。

【法人成りのメリット】

           項目            説明
税制面での優遇法人成りにより、税率が比例税率になるため、所得が増えるにつれて税率が上がる累進課税よりも税負担が軽減される可能性があります。
社会的信用度の向上法人としての地位は、取引先や金融機関からの信頼を高め、ビジネスチャンスの拡大に寄与します。
資金調達の容易さ法人格を持つことで、銀行融資や投資家からの資金調達がしやすくなります。
事業の継続性法人は個人とは独立した法人格を持つため、経営者の交代があっても事業を継続しやすいです。
リスクの分散法人成りにより、経営者の責任は出資額に限定され、個人資産を守ることができます。
経費の範囲の拡大法人では、個人事業主の時よりも多くの経費を計上できるため、節税効果が期待できます。
法人成りのメリット

【法人成りのデメリット】

            項目            説明
設立コスト法人を設立するには、定款の作成や登記費用など、初期費用がかかります。
税務申告の複雑さ法人税の申告は個人事業の所得税申告よりも複雑で、専門的な知識が必要です。
事務負担の増加法人は個人事業主よりも厳格な会計基準に従い、定期的な決算報告が求められます。
社会保険への加入義務法人の役員や従業員は、社会保険への加入が義務付けられており、コストが増加します。
解散・清算の手続き事業を終了する場合、個人事業主と比べて法人の解散・清算は手間とコストがかかります。
法人成りのデメリット

「法人成り」の事例

レンタルオフィスのイメージ

株式会社か合同会社か

個人事業主が法人成りをする場合、株式会社と合同会社のどちらの形態を選ぶかは重要な判断です。両者にはそれぞれ特徴やメリット・デメリットがありますので、自分の事業の規模や目的、将来の展望などに応じて適切に決める必要があります。

  • 株式会社は、一般的に知名度が高く、信用力や社会的地位が高いというメリットがあります。また、株式を発行して資金調達がしやすく、株式譲渡や組織変更も柔軟に行えます。しかし、創業時の初期コストが比較的掛かること、会計や税務、法務などの手続きが複雑で負担が大きいというデメリットもあります。
  • 合同会社は、2006年に新たに設けられた法人形態で、少数の出資者で事業を行う場合に適しています。様々な契約によって経営の自由度が高く、会計や税務、法務などの手続きも簡素化されています。しかし、株式会社に比べて知名度が低く、資金調達がしにくいというデメリットもあります。

以上のように、株式会社と合同会社にはそれぞれ利点と欠点がありますので、自分の事業に合った形態を選択することが重要です。また、法人成り後にも、事業の状況に応じて法人形態を変更することも可能です。次の節では、合同会社から株式会社に移行した事例を紹介します。

合同会社から株式会社へ

合同会社は、創業時には便利な法人形態ですが、事業が拡大したり、外部からの資金調達が必要になったりする場合には、株式会社に移行することも考えられます。ここでは、合同会社から株式会社に移行した事例を紹介します。

  • A社は、オンライン教育サービスを提供する合同会社でした。創業時には、出資者は代表者とパートナーの2名だけで、資本金も少額でした。しかし、コロナ禍によってオンライン教育の需要が急増し、事業が急成長しました。A社は、さらなる事業拡大のために、他社との提携や資金調達を進めることにしました。しかし、合同会社であることが障害となり、契約や交渉が難航しました。そこで、A社は、信用力や知名度を高めるために、2020年に株式会社に移行することを決めました。この移行によって、A社は、新たな出資者を迎え入れたり、株式を譲渡したりすることができるようになり、事業拡大に弾みをつけました。
  • B社は、美容関連の商品を販売する合同会社でした。創業時には、出資者は代表者と家族の3名で、資本金も10万円でした。しかし、B社の商品は口コミで評判になり、売上が急増しました。B社は、商品の品質や安全性を保証するために、国内外の認証機関との取引を開始しました。しかし、合同会社であることが不利に働き、認証料が高くなったり、審査が厳しくなったりしました。そこで、B社は、社会的地位や信頼性を高めるために、2021年に株式会社に移行することを決めました。この移行によって、B社は、認証機関との取引がスムーズになり、商品の品質や安全性を向上させることができました。

「法人成り」のポイント(まとめ)

個人事業主が法人成りを検討する理由は、税務や責任の面でのメリットがあるためです。法人成りには、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社などの法人形態があります。それぞれの法人形態には特徴やメリット・デメリットがあり、事業の規模や内容に応じて選択することが重要です。

【法人の種類と特徴】

    会社形態     特徴    メリット     注意点
株式会社株主が出資した資本を株式として発行設立や運営に関する法律が整備されており、株式の譲渡が容易 
合同会社設立費用が低く、運営が柔軟社員全員が経営に参加でき、出資者は有限責任を負う
合資会社有限責任社員と無限責任社員の両方が存在小規模な家族経営に適している無限責任社員は会社の債務に対して自己財産をもって責任を負う
合名会社全社員が無限責任を負う古くからの家族企業などで見られる形態出資者は全員が会社の経営に参加する
法人の種類と特徴

法人成りの手順
  1. 設立準備
  2. 定款作成
  3. 資本金の払込
  4. 登記申請
  5. その他の手続き

株式会社への法人成りの場合、定款の認証が必要であり、資本金の払込を証明する書類を作成します。合同会社や合資会社、合名会社への法人成りの場合、定款の認証が不要であることや、設立費用が比較的低額であることです。

税務面の違い

個人事業主は事業所得に対して所得税が課されますが、法人成り後は法人税が課されます。法人税の税率は所得税の最高税率よりも低くなるため、利益が800万円を超える場合、法人成りが税金面で有利になる可能性があります。

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