士業(専門家)を活用して問題解決を行う
個人事業主や小規模事業者は、日々事業を運営することに手がいっぱいで、重要な問題に気付いても手が付けられない状況にあるのではないでしょうか。大きな問題から小さな問題まで、誰にも振れずに問題を抱え込んだり、緊急性のないことは何カ月も先送りしているのではないでしょうか。
貴方は、問題に直面した時にどうしていますか?
一人で悩んでいる個人事業主や小規模事業者を対象に、街の士業(専門家)を活用してリーズナブルに問題解決をする方法がありますので、紹介していきたいと思います。
一人で悩んでいませんか
- 長期的に売り上げが減少傾向にあるため対策を打ちたいが、どうすればよいかわからない。
- 苦労して採用した従業員がすぐに辞めていくことが続いているが、原因がはっきりつかめない。
- 高齢になって仕事がきつく感じられてきたので、そろそろ事業承継をしたいが当てがない。
等々、個人事業主や小規模事業者は、問題を抱えて悩んでおられる方も少ないと思われます。プロに相談したいが、信頼できる業者も知らないし、時間もない、お金もあまり掛けたくないし、機密情報を他人に漏らしたくない等、お一人で悶々としているのではないでしょうか。
街の士業(専門家)は使える
問題解決の糸口を掴むために、同じ街に住む専門家である弁護士や公認会計士、税理士、司法書士および中小企業診断士等の士業に相談するのが、一つの現実的な方法です。彼らは国家資格者として、倫理規定に従い秘密を厳守し、専門知識と経験知で適切なアドバイスを提供してくれます。しかも、どの街にもある商工会や商工会議所では、無料で相談できる窓口が常時開設されています。
貴方の抱えている問題は、どの士業に相談すればよいか分かりますか?
せっかく相談の場に行っても、専門外なので別の士業を紹介される場合もあり得ます。士業には、独占的な専門業務があります。この独占的な専門業務と問題を照らし合わせて、相談対象の士業を選んでください。
民間企業の大勢を占める小規模事業者を国は支援している
総務省の資料によれば、中小企業の割合は、99.7%で、うち小規模事業者は84.5%を占めています。国力≒GDPを高めることは、すなわち個人事業主・小規模事業者を含む中小企業の生産性を高めることとほぼ同意になるため、国は中小企業施策として予算を組み、補助金や助成金、融資制度等の中小企業対策費として毎年数千億円の予算を組んでいます。
国は、中小企業に対して予算を使って支えようとしているので、こうした支援制度を活用しないことは考えられません。ところが、民間サービスのように派手な宣伝がないため、こうした機会を見逃している事業者が多いのではないでしょうか。
抱えている問題の解決に向けて、国の中小企業支援策を活用するアドバイスを無料でしてくれる専門家がいる相談の場があります。
士業(専門家)の使命と独占業務
国の支援制度を踏まえた問題解決の相談を受けてくれる専門家が士業です。各士業には、それぞれ独占的な専門業務がありますので、問題の内容によって使い分けると解決のスピードアップにつながります。
士業の独占的な専門業務
士業 | 独占的な専門業務 |
弁護士 | 法律に関するすべての業務を行う。 ・裁判書類の作成 ・法律相談業務 ・刑事裁判の弁護人 ・民事裁判の代理人 など |
公認会計士 | 財務の観点から、企業活動の適正性の保障や、経営活動のコンサルティングを行う。 ・財務書類を監査 ・財務書類の内容を証明 |
司法書士 | 公証や登記等の手続き、法的文書の作成と手続きを行う。 ・不動産登記 ・商業登記 ・成年後見業務 ・訴訟代理業務(特別研修を受け、法務大臣が実施する簡易訴訟代理等能力認定考査を受けて合格する必要) |
税理士 | 財務の観点から、税務の代行や、税務に関するコンサルティングを行う。 ・税務代理(確定申告の代行、税務調査の立ち会い) ・税務書類の作成(各種申告書などの作成) ・税務相談(法人・個人の税務相談に応じる) |
中小企業診断士 | 中小企業の経営に関する専門的な知識を持ち、経営診断やアドバイスなどのコンサルティングを行う。 ※法的に規定された独占業務はない |
社会保険労務士 | 人事労務に関する各種手続きの代行や、コンサルティングを行う。 ・人事労務管理のコンサルティング ・雇用保険・健康保険・厚生年金・労働保険料などに関する書類作成、事務手続きの代行 ・年金に関するアドバイス |
行政書士 | 官公署に提出する許認可等の申請書類の作成、提出手続代理を行う。 ・行政不服申立て等官公署に提出する書類 ・遺言書等の権利義務に関する書類 ・事実証明及び契約書に関する書類 |
弁理士 | 知的財産権に関する各種手続きの代行や、知的財産権の保護、利用促進、関係制度に関するアドバイスを行う。 ・特許/実用新案等に関する申請代行業務 ・技術機密の売買契約などの代行業務 ・起訴時に発生する業務 |
相談の場
相談の場としては、以下のものがありますが、まずは身近にある無料相談窓口を用意している商工会・商工会議所にアクセスしてみることをお薦めします。
- 商工会・商工会議所
- よろず支援拠点(中小企業庁)
- 経営革新等認定支援機関(認定支援機関)
- 民間事業者(コンサルタント会社、IT導入支援事業者 等)
街の士業(専門家)に相談することから、国の支援をレバレッジとして自らの事業を発展させる道筋を見つけましょう。
課題設定に迷ったら”中小企業診断士”に相談
問題が複雑で、全体像が掴めない。原因がはっきりわからないので、どこから手を付けたらいいかわからないといった場合が少なくないと思われます。
問題を絞り込めないので、解決すべき課題を設定できないときは、誰に相談すればわからないと思います。そういう場合は、中小企業診断士にご相談下さい。企業経営全般の広範な知見により、問題の構造を分析するところからお手伝いすることが出来ます。
また、問題解決の手法を駆使した事業計画の立案などに習熟している者が多いのも中小企業診断士の特徴です。
士業による相談の機会を無料で利用する
ここまで、士業(専門家)による相談の有効性や場をご説明してきましたが、この章では、商工会・商工会議所に設置されている経営支援機能を挙げます。その経営支援機能の一つに、士業(専門家)による相談窓口が設置されています。さらに、相談窓口の利用のしかたを、札幌商工会議所を例にご説明します。
商工会・商工会議所の経営支援
商工会・商工会議所の経営支援には、大きくカテゴライズすると、以下の6つになります。
- 経営、創業支援・相談
- 融資・資金繰り
- 販路取引拡大
- 交流・人脈づくり
- 人材確保・キャリア教育
- 就業環境
また、余談ですが、商工会・商工会議所には経営支援機能だけではなく、「企業PR・情報発信」、「生産性向上・経営改善」、「企業表彰」、「会員特典」および「地域活性化・地域貢献」の各機能があります。詳細は、最寄りの商工会・商工会議所のサイトをご覧ください。
相談のしかた(札商の例)
商工会・商工会議所の経営支援機能の中のひとつのサービスとして、専門相談員による無料で実施する相談・指導の場が設置されています。札幌商工会議所を例にご説明します。
相談メニュー(9種類)
№ | 相談メニュー | 専門家 |
1 | 経営相談 | 中小企業診断士、税理士 |
2 | 税務相談 | 税理士、公認会計士 |
3 | 法律相談 | 弁護士 |
4 | 労務相談 | 社会保険労務士 |
5 | 創業相談 | 中小企業診断士、公認会計士、司法書士、行政書士 |
6 | 金融(信用保証)相談 | 北海道信用保証協会職員 |
7 | IT経営相談 | ITコーディネータ |
8 | 海外ビジネス | 中小企業診断士 |
9 | 知的財産相談 | (一社)北海道発明協会 知的財産アドバイザー |
抱えてらっしゃる問題が、表にある9種類の相談メニューのどれに該当するか判断をします。もし、問題の整理が容易でない場合は、「1.経営相談」にエントリーすることをお薦めします。中小企業診断士と問題の構造を分析しましょう。
相談メニューが決まったら、札幌商工会議所のWeb予約システムから、空いている日時を確認して予約を行います。ちなみに一回の相談時間は30分です。予約後は、相談予約日時に札幌商工会議所に出かけることになります。
問題解決のポイント(まとめ)
個人事業主や小規模事業者は、日々の業務に追われ、問題解決が難しい状況にあります。一方、国は中小企業を支援するために、補助金や助成金、融資制度などの支援策を用意しています。そのため、一人で悩まず国の中小企業支援策の活用も視野に入れた問題解決を行うために、士業(専門家)に相談しましょう。
士業(専門家)を活用
個人事業主や小規模事業者の問題解決をするために、街の士業(専門家)を活用することが近道です。
士業(専門家)の使い分け
士業(専門家)には、独占的な専門業務があり、問題の内容に応じて適切な士業を選択することが重要です。課題が複雑な時や漠然としている時は、中小企業診断士に相談して、課題設定から行いましょう。(2-1の表「
士業の独占的な専門業務」をご参照ください。)まずは商工会・商工会議所の経営支援の相談窓口へ
商工会・商工会議所には、士業(専門家)による相談窓口が設置されており、無料で相談が可能です。最寄りの商工会・商工会議所のサイトから相談窓口にアクセスしましょう。
参照
札幌商工会議所のWeb予約システム https://airrsv.sapporocci-soudanyoyaku/calendar